納棺師とグリーフケア

父が亡くなり、病院の霊安室での一時安置。
父の遺体は、家族が到着し医師が死亡確認をして、すぐさまに霊安室へ移されました。
致し方ないけれど、父の遺体とともに、裏手に通じるエレベーターへ続く薄暗い通路を通って、霊安室へ向かいました。

病棟の外にプレハブで作られたそっけなく冷たい雰囲気の霊安室は、息をしていた何時間か前の「人」であった父が「モノ」的な扱いになってしまったようで悲しかった。
さらに、葬儀会社からのお迎えは何時ごろなのかと、看護師から幾度か聞かれた事務的な質問は、「死でいる人は早く出て行って」と言われているような気にもさせられた。
看護師には単なる仕事のルーティーンでしかないのだろうけど、たった今、遺族になった者には、いいようにはとらえられなかった。

父の遺体を乗せた寝台車と共に、自分の車を運転して葬儀会館に到着。
ほどなく、葬儀の見積もり担当の方との相談が始まる。
病院でのいきさつもあり、死んだ人はあのように扱われるものなのだと、何の期待もなく席についた。
しかし、その担当の方私たち遺族にも、亡くなった父の遺体にも礼儀正しく丁寧だった。
「そんなに丁寧に接してくれるのか・・・」と、ありがたかった。

そして、翌朝、遺体を清めてくれる湯灌師の方が来てくださった。
そのスタッフは女性2人で、所作も父の遺体の接し方も非常に丁寧で、プロフェッショナルであった。「感銘を受けた」といっても言い過ぎではない。

最初の担当の方、湯灌師の方のおかげで、心が少し救われた。
何か特別にプラスアルファのことをするのではなく、すべきことを丁寧に心をこめてしてくださった。
それこそ、グリーフケアの原点ではないかと、思うのです。
何年もたった今でも、そう思います。

湯灌師、納棺師、エンゼルケアディレクターなど、呼称はいくつかあるようです。
どのようなおしごとかは、映画「おくりびと」(本木雅弘さん主演)や、漫画「納棺師しおりの最後のはじめまして」をご覧になると、よくわかると思います。