労苦を共にした柳行李(やなぎごおり)

昭和ひと桁の方の葬儀に入らせていただきました。

お柩の近くに、大きめの柳行李(やなぎごおり)が置いてありました。

故人が18歳で、故郷の田舎から都会へ働きに出る時に、身の回りの物を詰めて、柳行李ひとつで出て来られたそうです。

柳行李=柳や竹で編んだ箱形をした入れ物。昔は、旅行や引っ越しの時に、荷物を入れて運ぶのに使われていた。

いくつかの地を移った時にも、その柳行李に荷物を詰めて引っ越し。自宅では物入れになって、押し入れの中。

故郷を出てから、70余年。

かの地へお旅立ちの時にも、柳行李は一緒でした。

お柩の中にその柳行李を何とか入れて……

そして、柳行李の中には、お供えのお菓子やたくさんの花。

物にも「気持ち」があるならば、主(あるじ)の自立の人生の始まりと、その終わりに、その柳行李は共に在ることを、誇らしく思っていたのではないかと、感じました。