主亡き、紫陽花

昔から知っている、隣の家のおじさん。

私が子供の頃から知っているおじさんだから、今では「おじいさん」という年齢になるのだけれど。

おじさん91歳、おばさん(おじさんの奥さん)89歳。おばさんのほうが、先に認知症になり、身体もおぼつかなくなってしまいました。

施設には入らず、息子さんたちとも同居せず、老老介護をずっとされていました。デイサービスは、週に4日くらいは利用されていたようです。

おばさんがデイサービスに行っている間に、家のことや買い物を、おじさんは自分でされてました。

年齢の割には、足腰もしっかりして、庭の花の手入れや、プランター菜園でプチトマトやゴーヤーなどを育てていた、おじさん。

息子さんたちも、近所の人たちも、誰もが、おじさんがおばさんを見送って……となるだろうと、思っていました。

ところが、寒い冬の夜に、おじさんは自宅の廊下で転倒し、起き上がれなくなっていました。翌朝、息子さんが自宅を訪れた時に、おじさんが動けなくなっているところを見つけたそうです。

救急車を呼び、即入院となったものの、数日して、オジサンは亡くなったと、後日、聞きました。

「おー、頑張っとうな!」と、おじさんの家の前で出会った時には、いつも、私にそう声をかけてくれていました。

主がいなくなっても、地植えの紫陽花は、枯れることなく、今年も大きな花を咲かせていました。

近所の人たちもきっと、おじさんの家に咲く紫陽花の前を通ると、おじさんのことを思い浮かべているのではないかなぁ、と思います。