ママのところへ

人の生き方も、逝きかたも、人それぞれ・・・
こんな方がいました。

小さなその人は、パパのために2年間、ママのところへ行くことを待ってくれていました。

ママは、小さなその人を産んだときに、一度も腕に抱くことなく亡くなってしまいました。
小さなその人も、その時に脳に障害を持ってしまいました。

一生のほとんどを病院で過ごした、小さなその人でしたが、
パパは、パパからママへの愛も、ママの分の愛も、パパの愛もすべて、小さなその人に注ぎました。

パパとママそれぞれの、おじいちゃんやおばあちゃんも、小さなその人を慈しみ愛していました。
病院の先生や看護師さんたちからも、本当に愛され、可愛がってもらった、小さなその人。

小さなその人が、声を出すことも、笑うことも、歩くことも、見ることはできなかったけれど、
パパや、パパやママの家族にとって、周りの人たちにとって、小さなその人の存在が、かけがえのないものでした。

ある春の日、
小さなその人はパパの腕の中で、愛で包まれた日々を閉じ、
そして、ママの腕の中へと翔けていきました。
生まれて初めてのお出かけでした。

 

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