桜と伯母

伯母サヨコ。私の亡き父の姉で89歳。認知症が進んできている。元は、美容室を長年経営してきた美容師。身寄りがいないため、姪である私が死後までの一切のお世話や手続きなどを託されている。住み慣れた大阪を離れ、私の住む神戸へと移ってきた。最初は向かいの家でスープの冷めない距離に住んでいたが、家の前の坂で転倒、骨折入院。その後、介護老人保健施設を経て、現在はサービス付高齢者住宅に住んでいる。

伯母の通院の付き添いの後に、喫茶店でモーニングを2人で食べる。トーストとサラダとカフェオーレ。ほぼ完食したサヨコさん。うん、食欲はあるようで何より。

それから、満開を少し過ぎたサクラを眺めながらしばしのお散歩。外出の時は車イス。
「来年の桜は、ここで一緒に見れるかな」・・・車イスを押しながら、何だかそんな感情がこみあげてくる。
季節がわかるように、桜の花と一緒にサヨコさんを写真に収める。いい笑顔。

要介護3のサヨコさん。
レビー小体型認知症の症状がかなり目立ってきていて、サービス付き高齢者住宅では、段々と対応が難しくなってきています。サヨコさんのレビー小体型の認知症症状で顕著なものは幻視です。
他の人には見えていないモノ、人、動物などがありありと本人には見えているので、それを追い払おうと大声を出したり、周りの人に言ったりするので、他の利用者さんを驚かせたりしてしまいます。
今まで私が本人から聞いたことがあるのは、「部屋に人がたくさんいて入れない」「窓の外に(イノシシくらいの)大きな猫が歩いている」「死神がきている」「太陽が違う方角から登ってきて危ない」などなど。

そして、幻聴もあります。
「向かいのカラオケ屋が夜中まで大音響で寝られない」(サヨコさんは右耳は全く聞こえず、左は補聴器をして聞こえる聴力)、「この辺に音楽教室があるの?『赤とんぼの』きれいな歌声が聞こえてきて聞きほれたわ」、など。
物盗られ妄想もあります。「○○が~を盗った。」「ここには盗人がいる施設だ」とは、よく言っています。

要介護3ですので、特別養護老人ホームに入所希望の申し込みはできます。
どのくらいの待ちになるかはわかりませんし、入所できたとしても、また新しい環境で一から生活に慣れていくのは気の毒でもありますが、今の場所に(本人の認識はなくとも)居づらくなってきているので、そうも言ってられないとも思います。

残りが限られている人生。どのようにしていけば、サヨコさんの心が安心できるのか、考えている日々です。